水栓の種類・構造・修理について

投稿日: 2013/05/24 0:26:25

はじめに

普段、なにげなく使っている自宅の水栓ですが、水栓といっても多種多様で、メーカーや種類・型番などによって構造や修理・交換の対応方法が変わってきますので、まずは水栓について簡単に説明できればと思います。特に近年のシングルレバーのタイプやサーモスタット付きの水栓など、そのタイプにより基本構造は似ていても、見た目よりその内部構造は複雑で、補修部品や分解方法はすべて違うと言っていいと思いますので、その修理には特に注意が必要です。

水栓にも大きく分けてもタイプがいくつかありますので、その特徴を紹介できればと思います。(自動水栓やオートストップ水栓等除く)

※これから紹介するすべてのタイプに使用条件や設置環境の種別として、壁付き(壁から出ているタイプ)・台付き(デッキ型とも言う、台に付いてるタイプ)、と大きく2種類ございます。又、その中でも、水栓の主要部位(本体部等)をユニットや化粧パネルなど部材の裏等に分離・組込されるタイプや、それらを建築物内に施工する埋込タイプなどがあります。

■参考: 水栓金具メーカー一覧(過去に販売していたメーカーも含む)

単水栓・2ハンドル混合栓

お使いの水栓が『単水栓』か『2ハンドル混合栓』なら、ほとんどの修理がお客様自身でも可能な場合があります。

それは、構造が比較的単純であり、各部品に互換性がある物が多く、安価に手に入れる事ができるのが大きな要因です。

そして、我々業者もこれらの水栓を修理する場合、たとえ水栓本体に問題があり内部部品交換で治らない場合があっても、使用した部品代も安価で分解も容易な為、その後、交換の提案に至ったとしても、お客様との話し合いはスムーズに行えます。

例えば、こんな水栓。

単水栓(単水栓とは、湯水を混合しない物)

この参考水栓は商品名としては、「自在水栓」といわれるものです、その他、形状により名前はそれぞれ「横水栓」「ホーム水栓」「横自在水栓」「立水栓」等などあります。内部構造は単純でパッキン(コマやケレップ)と言われるものが、スピンドルといわれる部品を回転させて押され止水し、開けると逆に水圧でパッキンが押され(※一般地用)水の通り道を作り、吐水しています。ほとんどの部品がホームセンターなどでも購入可能で、互換性があります。

この水栓の水の流れ方はこんな感じです。

よろしければこちらもご覧ください→DIY紹介

※注意:参考までにお話しします。水道法の規定の中に、汚染防止・逆流防止などがあります(内容省略)、一般地のこれらの水栓はコマがスピンドルに固定されていません、なぜなら、管内に負圧や逆圧が生じた場合、そのコマが塞がり、汚染防止・逆流防止の効果があります。そして、施工規定の中にも吐水口の先端から水が溜まるあふれ面までの距離を確保する為の、”吐水口空間”と言うのが定められており、例えばホースなど接続したりする場合の使用には十分注意が必要です。

2ハンドル混合栓(写真は”台付”2ハンドル混合栓で、壁から付いてるのは”壁付”です)

この水栓は上記の単水栓と同様に、水を出し止めする仕組み自体は一緒ですが、その仕組みが2ヶ所あり湯水混合になります。修理自体に大きな問題を抱えることは少ないと思います。DIY紹介ではまだこの水栓を紹介していませんが、ハンドル上部の青や赤の部分を先の尖ったもの(カッターでも良い)で、隙間からピロっとこじれば、中にビスが見えます。そのビスを外しハンドルを外して(ハンドルがはまるギザギザ付きの樹脂部品を無くさないように)から、多少ナット類の形状こそ違いますが、単水栓同様にパッキン類を交換出来ます。但し、こちらは旧型の水栓を参考にしてるので、部品に互換性があるのが多いですが、用途により最近ではその部品一体型にして、専用部品にしてる製品も多くなっています。

シングルレバー混合栓・サーモスタット混合栓

現在住宅では主流となっている『シングルレバー混合栓』や『サーモスタット混合栓』、これは構造が複雑なので、内部部品の修理には我々業者でも慎重になってきます。

その理由はメーカー・各機種によって内部部品の互換性の無さ、それと同様に部品点数の多さ、そして部品代が高価で分解方法も様々です、中にはメーカーの専用工具が必要な物も、本体を脱着しなければならない物もございます。

なので、このような修理は水栓のメーカーのメンテナンスが当然そのノウハウを持っています。

設備業者が内部分解修理をするには、仮に水栓本体側に異常があって内部部品交換で治らなかった場合や、他の部品が必要な場合(2重手間)など、そのリスクは業者の責任問題・保証問題、その後のお客様との話し合いに問題点が出てきます。

その細かい理由を少し説明させて戴くと・・

上部の単水栓など違う注意点で、その内部に使用されるOリング等のゴム類と本体側に接する部分の特性が上げられます。

単水栓等に使用されるゴム類は、締め込んだり、押し付けたりしてその力でゴムを変形・密着させて、流体の流出を阻止してるものが多いのですが、これらの水栓はOリング系のゴム類が多用に使用されていて、それらは必ずしも締め込み等でゴム自体を押し付けて密閉するものでもなく、流体の圧力によりゴム部自身が変形する時に出来る作用を利用している為、基本、締込み部はそのゴムを押し付ける、と言うより、主に抜け防止の為の締込み作業が多くなります。

なので、機種それぞれ絶妙な隙間と間隔で製造・組合せされていますので、例えば、本体側の劣化や変形や汚れなどと同時に、補修部品との位置や組み合わさりかたの微妙な関係が重要な要素になります。

それは見た目ではわかりませんし、不具合が補修部品交換で治れば幸いですが、現実的にはやってみないとわからない事に繋がります。が、生活に密接するこれらの水栓は、例えば、取外して持ち帰り分解オーバーホールする、と、言ったような対応は時間も費用の面からも現実的ではありませんので、これらの内部修理には主にそこにリスクが高いので注意が必要だと言うことです。

例えば、こんな水栓。

シングルレバー混合栓(写真は”台付”シングルレバー混合栓で、壁から付いてるのは”壁付”です)

近年ではこのタイプが一番見かける事が多いと思いますが、その用途や種類も様々です。基本的にこの水栓は、本体内部のバルブ部(カートリッジ)が、止水と混合のすべての機能を有してます。

使うときの操作はレバーの上下左右ですが、このバルブ部内部ではゴム類は使用していなく、非常に精密でセラミック等の素材が組合わさり、前後左右に動いて、素材同士の摺合せによって水がコントロールされますので、上記の単純な水栓のようにパッキンを押し付ける動きはしてない事をイメージして下さい。又、その他にもOリングやVパッキンと言ったような部品があり、これもすべて互換性がありません。

そして、上部のハンドル式に比べ、そのゴム類が本体側に接している部分の径が大きいうえ、水の流動方向への断面距離は非常に短く、そこが稼働する物しない物と分かれますが、上記に書かせて頂いたOリング系のゴムの特性などにより、本体側の金属の摩耗や腐食・水アカや錆などの微妙なゴミ・キズなどにも比較的弱い性質をもっていると思います。

サーモスタット混合栓(写真は”壁付”サーモスタット付きシャワー水栓で、台から付いてるのは”台付”です)

サーモスタット(自動適温維持装置)付きの水栓ですがシャワー付などで浴室に使われる事も多いですね。

こちらは、使い勝手は良い反面、非常に部品点数が多く複雑です。サーモスタット内部は熱による形状記憶合金を利用してると聞きますが、詳しい原理まではわかりません。

こちらも内部部品の互換性はありません、それぞれの部品と本体がゴム類やバネ類を使用して複合的に組み合わさっていて、その心臓部はやはり素材自体の摺合せにより稼働していたりします。

又、内部のゴム類自体も上記で書かせて頂いたOリング系のゴム類が多く使用されております。そしてその構造も分解組立方法も様々で、メーカーの機械的技術が集約されていると思う商品ですので、内部修理に関してはさらに慎重になってきます。

●以上のようなこれらの水栓が、ユニットバスや洗面ユニットなどに使われている場合、そのほとんどの水栓が、そのユニット専用品となっている為、仮に交換予定する場合、条件によっても異なりますが、基本的にはそのユニットのメーカーやシリーズ・型番から調べて、旧型の場合は代替品など、ユニットに合う専用水栓を選定する必要があります。

その他の水栓

水栓でも色々あります、見た目、ハンドル式の水栓でも、その内部は安価で単純な部品を使用せずに、互換性がない専用部品や、分解組立も容易ではない物もございます。

見分け方は、ハンドルが90°しか動かない水栓や、本体部が隠れれてハンドル部しか見えてない水栓など。

例えば、こんな水栓。

商品名は緊急止水付横水栓ですが「単水栓」です。(混合栓もあります)

近年よく見かける洗濯機専用の水栓です。

自動洗濯機の場合、洗濯機ホースの先まで常に水栓全体に水圧がかかった状態で使用してる物です。それに合わせ耐久性・安全性など考慮して、ホースが外れた場合の緊急止水や、本体の耐圧性や、水道本管への汚染防止・逆流性能などを考慮した構造だと思います。部品点数は少ないですが、一体型の部品で安価とは限らず互換性もないのが特徴です。

2ハンドル混合栓(セパレートタイプ)

ハンドル混合栓とは言っても、タイプにより構造が様々です。この水栓は普段見えてる部分と、本体部がカウンターなどの下に分離しているものです(いわゆるセパレートタイプです)。この参考の水栓は洗面器用ですので見た目より、細かい部品点数が多いのが特徴です、但し、そのほとんどが接続部品であり、内部部品は限られてきます。似たような水栓で、浴室従来工法(作り風呂)の埋込タイプがありますが、それらはタイル等に埋め込んで施工してある為、交換は容易ではございません、その為、埋込部分の接続は最小限に抑え本体は一体型が多く、メーカーも上から修理出来るように考えております。

このようにタイプもまた分かれますが、この参考の水栓では、その構造は単純にコマパッキンなどで止水するものでは無く、一体型の部品構造で摺合せによって水をコントロールしている製品です。なので、その部品の互換性もなく、分解も容易ではない為、専門的になってきます。

水栓の修理・交換の対応

このように水栓にも色々ございますので、特にシングルレバーやサーモスタット水栓など、複雑な構造の製品の本体内部修理に関しましては、「工事保証が出来ない」「施工リスクが高い」為、弊社では基本的に使用年数を元に修理か交換を、話し合いの上、お客様にご提案しております。

※一般的に水栓メーカーの補修部品保有期間は10年前後です、耐用年数も同程度とされております。ちなににメーカー保証は1~2年程度が多いです。それと、仮に内部修理をしたとしてもその後の寿命がどのくらいかは機械物なので何とも言えなくなります。

[シングルレバーやサーモスタット水栓の場合の対応例]

使用から5~6年以内の水栓 : どちらかと言えば修理をおすすめ致します。(型式によりメーカーに依頼。又は弊社で可能と判断した場合は自社施工)

使用から7~10年ぐらいの水栓 : どちらかと言えば交換をおすすめします。(修理の場合はほぼメーカーに依頼)

使用から10年以上水栓 : 交換をおすすめします。(修理の場合はメーカーに依頼)

これはおおよその目安です。

使用状況・使用環境・当たり外れもあり、器具の消耗期間は一口には言えないのですが、お客様の声の中には物件を購入し、はじめから建物に付帯してある設備は、壊れたり、修理したり・交換したりする、とイメージを持ってない方もいらっしゃいます。設備と言っても配管はまたその性質は異なりますが、水栓に限らず水まわりの器具や機器は、常に水質・水圧・熱などで摩耗や腐食に耐えながら毎日使用している物です、そのわりには結構保つ方だと私は思います、ただ、最近の器具は便利になる反面、故障した時のリスクは大きいですよね、でも、それは家電・家具・乗物などどんな製品でもそうかもしれません。

補足・水まわり周辺のトラブルの内、器具周辺の水漏れや出水不良の原因が、お客様はその機器や器具と思っていても、実際に調査にいくと実は他に原因があったり、根本が別にあり連鎖的に不具合が生じたりしてる場合もございますのでご注意下さい。