樹脂管・配管漏水の話

(架橋ポリエチレン・ボリブテン)

投稿日: 2021/07/09

樹脂管・配管漏水の話 (架橋ポリエチレン・ボリブテン)

さて、今回は配管の中でも比較的新しい材質として使用されるようになった樹脂管(架橋ポリエチレンパイプ・ボリブテンパイプ* 以下樹脂管と呼ぶ)の漏水についてお話ししてみたいと思います。

まず、従来から都内で使用されてる水道管(給水装置・宅内給水管)について簡単にお話しします。

昭和初期頃でしょうか?、都内で水道が一般家庭に普及してからの話をすると、古くは宅地内の配管は「鉛管」が多く使用されていました。

その後、寒冷地ではない東京では「硬質塩化ビニール管」が早くに承認されたようで、数十年前から都内では現在一番多く普及していて、ビルなど建物の条件よっては「鋼管」(SGP,VA,VB,VD、菅の皮膜処置などによって種類がある)が使われております。

ちなみに現在、塩化ビニール管は比較的衝撃に強い「耐衝撃性硬質塩化ビニール管」が多く使用されています。

給湯管については、戦後の高度経済成長期に家庭に必ずお風呂が設置されるようになったり、キッチンでお湯が使えるようになりましたが、当初はお風呂を追い炊きする為だけの風呂釜や、キッチンでは小型の瞬間湯沸器が主流でしたので、給湯の配管は必要ではありませんでした。

その後、先止め式の風呂釜や給湯器でシャワー水栓を設置したり、近年では電気温水器なども多く普及しておりますが、熱源1台で複数の給湯が可能になり、配管が必要となりましたよね。

その場合、古くは熱に強い「鋼管」が使われてましたが、耐食性に不安がある為、次に「耐熱性硬質塩化ビニール管」が普及した後、耐熱性や熱伝導率などが支持され「銅管」が使用されだし、その銅管の中でも管の周りを樹脂処理加工をしてある「被覆銅管」が多く使われるようになりました。

ちなみに、私がこの仕事を始めた27年前は、給水管は従来の塩ビ管から徐々に耐衝撃性に切り替わっていく時期で、給湯管は被覆銅管を使っておりました。

そして現在の話になりますが、近年の住宅には給水管と給湯管、どちらも「樹脂管」が主流になっているようです。

樹脂管の存在を私が知るようになったのは、今から20年前くらいでしようか。

当時、様々なメーカーから販売され、仕入先や管工機材店に行くたびに営業されたり、メーカーの担当者が直接弊社に来店しては、工法や素材の説明、使い方や注意点、維持管理など色々とお話しをうけました。

それから現場によって私も徐々に徐々に使い出したのは約17年前ぐらいからだと記憶していますが、やはり、この樹脂管を使用する際の条件をよく考慮しなくてはなりません。

現在でも樹脂管は大きな口径は存在しないし、何よりメーカーの説明では日光や風雨など耐候性が低くと言う事で、屋外配管や地中配管にはそのまま使えません。

なので、新築でこの材料を使う際、分岐工法でいくのか、ヘッダー工法でやるのか?、損失水頭など流量は大丈夫か?、給水給湯すべて使うのか?、給湯だけ使うのか?、屋外や地中を経由するとき違う材料を変換して使うか?などなど

この材料に限らない事ですが、維持管理も踏まえ使用材料の選定は慎重に行う必要があります。

私自身どちらかと言うと慎重派なので、当初から樹脂管は主に新築でのヘッダー工法や、給湯管のみの使用としておりました。

そんな中、樹脂管は施工性に優れている為か、時代が多様化し誰でもとこでも材料が手に入る時代となったせいか分かりませんが、場所や条件をあまり気にせず施工してる場面が多く見受けられます。

樹脂管も含めどの材料も標準的な耐用年数は30年くらいだと言われるように、経年劣化による配管漏水(器具漏水は除く)が起きる場合、築約30年前後辺りからが多い印象が経験上私にはあります。

しかし、ここ数年、徐々に樹脂管の漏水修理依頼が増えてきた印象がありますが、お客様に状況を聞いても施工をして約10年~15年とか言う話なのです。

私としても、配管漏水としてはちょっと早いんじゃない?って思うのです。

そして現場に行くと、その漏水のほとんどが給湯器周りの屋外露出配管部分だったりします。

やはり、樹脂管の場合は「耐候性が低い」と言うのをどれだけ意識した施工をしてるか?って、現場で改めて思いました。

配管にライトカバーなどの保温工事をしてあっても劣化して漏れる時は漏れるようです。

私の経験では配管漏水が起きるのは、鉛管以外、どんな材料も継手(ジョイント)部分がほとんどですが、樹脂管の場合は、継手部分よりバイプ部分に亀裂が入る方が多いようです。

適正な曲げ半径以内の施工かどうかも気になりますが、やはり、この「耐候性に不安がある樹脂管」を屋外に出す場合の施工のやり方の問題だと思わざるおえません。

ちなみに、弊社では給湯器など屋内と屋外を経由する配管は、必ず専用の貫通部品を使うか、管種を変換して屋外に出すようにしてます。

最近では屋外配管用のカバーが販売されたり、建売でも給湯器下部の配管カバーを付ける現場も増えてきたように見受けられますが、どれくらいの人達がどれくらいの注意をはらって施工してるのかは、私にはかわりません。

ただ、私は決して樹脂管自体の信頼性を疑ったり否定してるわけではありません。

製造メーカーだってあらゆるテストをしながら開発をして、専門機関の承認を得たり、規格を統一したり様々な努力をしてると思います。

だけど、この日本において長く使用される水道管としての実績や信頼性を得るのはそれだけでは不十分かとも思います。

それは製造メーカーだけの話ではなく、材料を取扱う販売店~業者、強いては消費者に至るまで、その扱い方や維持管理を周知徹底される事が重要ではないかと思います。

当然、建物やその設備は一生モノではないので、どれだけ適正な施工をしていても経年劣化により色々な箇所に不具合は出てくる可能性があり、その時期も様々です。

そこで1つ言いたいのですが、どんなモノでも「手軽で簡単で便利なモノ」を「気軽に安易に都合よく使う」と、勘違いをおこしたり、混同してる場面があると思うこです。

その、「手軽さと気軽さ」は全くもって違う次元にあると私は言いたいのです。

もし、何でもかんでも「手軽さと気軽さを」を実現する社会を目指すならば、抜本的な規制緩和をし、もはや私たちのような専門業者は必要ありませんよね。

素人施工でも何でも、全て自己責任でどうぞ…って、私はそう言い残してこの仕事から撤退するでしょう。

もちろん、災害等が起きて断水する事や経年劣化等で漏水が起きたりして不便さを感じる事は誰でも経験する可能性はあります。

今回、樹脂管の配管漏水と題してブログを書いてみましたが、そこまで大きな問題じゃないかもしれません。

私は科学者でも製造メーカーでも何でもないので、明確な根拠を示してプログにしてるわけでもなく、主観で話してるにすぎません。

もし、ここまで読まれた人の中に、心配されたり不安を抱く方もいるかもしれませんが、今や、ビルや住宅や店舗など樹脂管はあらゆる場所で施工されています。

私には、屋外配管の樹脂管全てが漏水の可能性が高いなどとは言えません。

このブログをお読み頂いた消費者の方には、「こうゆう事もある」と、情報の1つと捉えて頂ければ幸いです。

そして、施工する側の立場の私たち業者や、製造メーカーや商社の方々は販売方法なども踏まえ、「手軽さと気軽さ」を混同しないように十分に熟慮して施工出来る環境作りに取り組まなければなりませんね。

近年、業界内でもこういった情報共有やコミュニケーションが不足してる気が私はしておりましたが、コロナ禍においてはさらに増してるような気がします。

この情報社会において「情報は正しく理解されなくては世の中はいつも一方向に傾いていく」気がしてなりませんので、時に立ち止まり、時に修正し反省しながら、1歩1歩進んで行きたいと思います。

「情報は知識にあらず」(by.アインシュタイン)です。

失礼いたしました。

そしてお読み頂きありがとうございました。