逆手順の思考

投稿日: 2021/03/26

こんにちは、ワタクシ則竹工業所の松本と申します。

今回は「逆手順の思考」と題して書いてみようと思いますが、文章力が無い私なので、先がどうなるか解らないブログとして、広い心でお読みいただければ幸いです。

以前、「設備工事の基本」と題して記事を書いたことがありますが、それは、今思えばこのブログで言おうとしてる事を遠わまわしに書いていたよにも思います。

しかし、今回はもっと率直に業者にとっての「工事に対する考え方」や、お客様にとっての「業者の選び方」とか、何が必要で何が大事なのかを改めて自分なりに書いてようと思います。


さて、普段、仕事をしててよく思う事なのですが、例えば、工事の進行を1から10だとすると、計画や見積もりの段階からそのまま1→2→3の手順で思い描いて設計や積算をしてると思うかもしれませんが、実際はそうとも限りません。

工事にはお客様と業者の行き違いや誤解なとが発生する事がありますが、それは何故なのか?今一度考えてみたいと思いますが、そんな時は一般的な「モノづくり」を思い描いてみると良いかもしれませんね建築も設備工事もいわゆるモノづくりあり、現場毎に条件も違えば、使う材料も違えば、工具や工法も違うオーダーメイド工事ですらかね。

例えば、モノを作る時一番初めは「こんなモノでこんな事がしたい!」と、企画をして「未来を想像すること」から考えるはずです。そして、その為には何をするか?、と「計画したり設計する」わけですが、その時、その人の頭の中は「完成系から徐々に逆回し的に分解して構造を組み立てる」はずなのです。

つまり、10→9→8・・と、逆手順に物事を考える事が必要です。

建築で言えば、その建物の用途や地域の条件などを踏まえて、住宅ならば家族構成や生活習慣、あるいは未来の暮らしを想像しながら、逆回し的に考えて建築士が詳細な計画や設計をします。

水道設備工事で言えば、まずはその地域や建物の用途、目的によってどのような生活活動をしたいのか?、どこに何がどれだけ必要か?、その人達の暮らし方など、未来を想像します。

それによって、まずは給水方式、構造、使用材料が大まかに決まっていきます。

蛇口や器具1つとっても、それがどんな用途でどうように使われるか?、一定の基準を満たしているか?、配管は建築に対してどうなのか?、などを考慮して計画、設計していきます。

それも、逆回し的に全体を1つ1つ分解して、やっと給水装置や排水設備の根元部分となる水道メーターや公共桝、道路から引き込む管種、口径、深さなどが導き出されるわけです。

つまり、10→9→8・・と、「完成系から徐々に分解して構造を組み立てる。そして、実際の施工は1→2→3・・と、正手順でモノづくりをしている。


話は少しそれますがよく、「工事の変更は時間とお金がかかる」と言いますが、なんとなく解りますよね?。

例えば建築において、設備器具は建築工程の最後の方に設置される事が多いですが、その局面で器具だけ変更をしたとしても、問題を抱える事が必ずではないけど多々あります。

寸法や納まり以外にも、器具により配管位置の違いはあるし、場合によっては用途やメーカー指定により最低水圧とか、材質や口径まで違う事だってあります。

つまり、器具の変更は配管のやり直しに繋がる可能性も大きく、ましてや、すでに内装が仕上がっていれば、それらの解体も必要になったり、配管も一部変更は技術的にも様々な問題があったり、場合によってはほぼ撤去してやり直しが必要だったり、構造物に手を加えないと難しい事もある。それに加えて、工期、工程の変更や、図面や申請の変更なども必要かもしれません。

簡単に言うと10→9→8・・と逆手順で計画して…1→2→3・・正手順でその通り施工した。それをまた、8→6→5・・と再計画して…5→6→7→8→9→10と再施工する。

そりゃお金や時間もかかりますよね

その基本的な考え方は、リフォームや修理でも同じだと私は思っています。


メディアなどで、よくDIYやリフォーム事例が紹介されているけど、beforeとafterばかりが目立つ為、途中経過が伝わりづらかったりします。

宣伝や広告でも、「簡単施工!」や「低価格!」などのキャッチーな言葉ばかりが溢れています。

「そんな簡単なら誰だって苦労しないよ!」って、思ってる建築関係の人も少なくないはずです。

だからと言って、物事を複雑すれば良いって事でもないと思いますが、肝心なのは「互いに共有して理解」すること。

お客様の思う10

業者が考える10

「同じ10」なのか?

お客様の思う手順…1→2→3・・

業者が考える手順…10→9→8・・

「同じ内容」なのか?

出来るだけ見えない部分を互いに共有して想像する事が大切だと私は改めて思うのです。

単に水漏れとか詰まりとか言いますが、現場によってその症状や原因、対処法や修繕のアプローチまで全て違います。そして、最終的な結果の「10」は、復旧なのか?改修なのか?改善なのか?新設なのか?…、その意味すら違います。

その事が、「解りづらさ」や「曖昧さ」に繋がり、業者とお客様で誤解や行き違いが発生してると言いますが、100%は無理でも、出来る限り擦り合わせる事は可能です。

今の時代、色んな情報やモノが比較的簡単に手に入りますが、簡単に手に入り、簡単に利用されてるものが、簡単に計画して作らてれいるとは限りません。

当たり前ですよね。

業者にとって真から工事に向き合い、常に勉強していなければ、「逆手順の思考」すら出来ませんから。それは、一方通行の情報では決してわかりません。


例えば、オーダーメイドのアクセサリーや洋服を新たに作ったり、治したりしてもらう時だって、どんなイメージで何の材料を使ってどのように仕上げるかをちゃんと打ち合わせをしますよね?。

知らない事、解らない事があるからこそコミュニケーションが大事です。

そこで、業者選びの重要性ですが、結局は「人と人」だったりしますので、明らかに悪徳な業者を除き、何が良い業者で、何が悪い業者など私には言えないし、正解はありません。

だけど、好き嫌いはあって当然です。


これは私個人的な感じ方なのですが、「リフォーム屋」という言葉があまり好きではありません。何故なら、結局「何屋さん?」「何が専門?」…って、話になってきます。

私達は「水道屋(設備屋)」なので、水周りに関わる「逆手順思考」は出来ます。

だけど、例えば、折り紙を「逆手順の思考」で、1つの紙に折り線を描く事は出来ません。

「餅は餅屋」と言う言葉があります。(何事においても、それぞれの専門家にまかせるのが一番良いということのたとえ)

建設業も様々な業種があり、それぞれ専門的な職種で成り立ってますが、建設業許可には「リフォーム業」と言うカテゴリーはありません。

例えば、一般的な総合建設会社を、私は「建築屋さん」と呼びますが、建設業許可における、建設工事の種類は建設業法上で、2種類の一式工事と27種類の専門工事に分けられます。

建物に関しては、新築工事にしろ改修工事(リフォーム)にしろ、私が思う一般総合建築における元請け企業にふさわしいのは、やはり「建築一式工事」の会社ではないでしょうか?

そして、現行の建築業法は一般的に大規模になるほどその効力は増しますが、小さくなればなるほど、その効力がほぼ無くなり、小規模工事でのトラブルが多発してるように感じます。

だけど私は小規模工事において専門工事業者が元請けになる事を否定してるわけではありません。私達だって水周り工事をする時に、自社が元請けとなり外注(下請け業者)に依頼する事もあります。

このように、小規模工事において、あらゆる企業が元請け会社にもなるし下請け会社にもなるのが現状です。別の言い方をすると、あらゆる企業が協力店にもなるしライバル店にもなるって事です。

しかし、どんな場合も私は自社を「リフォーム屋」と名乗る事は断じてありません。


例えば、家電量販店がリフォーム工事を請け負ってる事もありますが、誰もが一目で「家電屋(電気屋)」だと解ります。

それと似たような感覚で私にとっては「建築屋さん」や「大工さん」や「内装屋さん」など、全く違う存在になります。

その感覚がある私が「リフォーム屋」と名乗った業者様からの依頼があった時に、その仕事を辞退する事や商談が上手くいかない事が少なくありません。

昨今、物事を簡単に簡単に進めようとする人が増えているようにも感じますが、そもそもどんな仕事も一朝一夕には行きませんよね。

建築業は色んな意味でコンプライアンスが重要ですし、基本的に工事品質や工期や支払いタイミングなど、発注者側も受注者側も双方にリスクを背負ってる「信用商売」なので、昔から慎重に事を運ぶ必要性が問われています。

そんな事を念頭に置いて初めての業者様とお話しをする中で注意することは、やはり「御社は何屋さんですか?」みたいな話になり、次に元請け業者として全体像の「逆手順の思考」(計画)がどれだけあるのか?を、お話しの中で感じとります。

その時に違和感を覚えるのは、互いに解らない事を確認し合う必要があるのに、どれだけ話しても「10」と「0」の話しか出来ない業者の方がたまにいます。

つまり、主に「結果」と「お金」の話だけす。

そんな問い合わせほど急ぎの案件だったり、予算が予め確定してたりします。

それでは信頼関係は築けません。

その業者の先にはエンドユーザー様がいますが、私達にとってはその工事の契約は業者間だけど、施工責任や公的申請に関わる部分はエンドユーザー様の代理のような責務を負います。

なので、無理に請け負った場合、そのリスクの影響は計り知れないので、簡単に2つ返事など出来ないし、前もって元請け業者の計画や準備を聞いて、現場調査~協議をして、専門工事店の立場からも精査する必要があるのです。

勿論、「リフォーム屋」と名乗る業者が必ずしもそうではありませんが、そこら辺がの理解が抜けてると思う話が近年よくあったのは事実です。


考えてみると、宣伝や広告「結果とお金」だけが目につくように作られいて、そして、消費者にとってそれが一番解りやすいわけです。

さらに、「今だけ限定!」とか「この広告を見た人だけ!」とか、人間心理を巧みについてきます。

私にしてみると、それが良いか悪いかではなく、この業界では一番怖いと思うところです。

別に、工事に関して10~0までの間を解らないのはいいのですが、一番信用の度合いを推し量る肝になるのが、解らないことを「解らない」と言わないことであり、中には上手い口調で誤魔化す人もいます。

そうなると必然的に私はその仕事を辞退します。

ちなみに、仕事を断るのってかなり勇気いるんですよ。昔はそれで悩んでた時期もあります。

ただ、そのような事ってエンドユーザー様(お客様)にとって業者選びのヒントに少しなるのかなぁって思うのです。


一般のお客様が、設備や建築の仕事を依頼しようと業者を探す時って、10~0の間が解らないのは当然ですが、私達業者にとっても初めは現場の事が解らないのも当然です。

つまり、解らない者同士で初めはコミュニケーションを取るわけです。

それを意識しながら、気になった業者に電話だけでも良いので、まずはお話してみると何か気付く事があると思うのです。

ま、工事の担当者と直接話せるとは限りませんが、普通のお店と同じように「話した相手=業者(会社)」だと思って、その人の人間性でも良いし、工事に対する考え方など、何でも良いので感じとれる事があるはずです。

その先に「現場調査と話し合い」となりますが、お客様にとっては「家に来る」こと自体に抵抗を感じてる人も少なくないと思います。

その「抵抗感」を少しでも和らげたいのですが、その手段が10と0だけの解りやすい宣伝だったり、私にとってはこのような解りずらい「記事やブログ」になるのでしょう。


先日、外国人が書いたある記事を読んでいたら、日本人は他国に比べると比較的人見知りが多くて、一人でいる時間が苦に感じない人が多い。(中略)だけど、何かのキッカケで一度話すと、外国人同様、気さくで明るくよく喋る。。~みたいな事が書いてありました。

私は、「あ、なんかわかるなぁ」なんて思いましたが、私も人見知りで比較的無口だし、文章もかなり苦手だけど、「よくもまぁ、このブログを長々と書くもんだなぁ」…なんて、今、自分自身で思ったりしてます。

もし、誰かに建築や設備の相談をしようと考える人がいたら、「逆手順の思考」を意識して業者とコミュニケーションを取ってみると、もしかしたら、双方が納得いく話が出来たり、新たな発見があるかもしれませんし、逆にちょっと違うなぁって感じたりも出来ます。


これは余談ですが、私の趣味の中に車がありますが、昔はよくカスタマイズをしてドライブをしておりました。その時、整備をして貰うお店を探すのに結構苦労した記憶があります。

当時、私は自動車ディーラーしか知ってる所がなくて、そのディーラーが断るカスタムをしてくれるお店を探すわけです。

その昔からバイクも乗っていたのですが、整備屋さんの人の中には癖のある人も多いイメージがあり、人見知りの自分にとってハードルがありました。

そんな中、当時は雑誌の情報などを見て色んなお店に車を持ち込んで話しを伺おうと、ガソリン代や交通費をかけてでも一人で遠くまで出かけるわけですが、その度にスゲェ緊張してた記憶があります。

そうこうしながら、費用の話も重要ですが、出来るだけにその緊張をほぐしてくれたり、納得の行く話が出来たお店に愛車を託すようにしてましたね。

つまり、仕事を依頼する側が情報収集をするのに時間とお金をかけてたわけです。

それと同様にするつもりはないのですが、建築関係でも見積無料とかよく宣伝してますが、基本的に業者は「逆手順の思考」をする為に、人件費や交通費をかけて現場を見て、色んな情報収集をして計画を練ります。

それは、業界の性質上やむ得ない部分なので仕方ないのですが…言い換えれば、自動車整備のお店側が来てくれたお客様に対して、お買い物なしでキャッシュバックをするようなサービスと捉えることもできます。

だけど、当然、整備内容によって見積料が必要となるケースもあります。

そりゃそうです、車だって見える部分と見えない部分が存在し、中には整備士が車を分解して確認しながら情報収集をして計画を立ててお見積もりするわけですからね。

建築業界で言えば、見積無料はご連絡してくれたお礼のサービスって捉える事も出来ますが、経営上すべてにってわけにも行かないので、例えば、弊社では地域や案件により条件付きで見積無料にさせて頂いております。


そんな事も踏まえつつ、やはり、今の時代情報が簡単に手に入りやすい為に、正しい情報と間違った情報が入り乱れ、本当に必要な情報は「目立つ情報の影に埋もれてる」可能性がある気がずっとしています。

そう考えると、人の心は見えないからこそ他者の気持ちを想像するのと同様に、建築設備工事も見えない部分があるからこそ、知識や経験を活かして想像力をフルに発揮しなければなりませんよね。

それが、「逆手順の思考」と題した私のブログでした。

長々と失礼いたしました、そして、お読み頂きありがとうございました。